
毎日グッスリ寝ること、スッキリ起きること
住まいの手引き
浴室は南向きとし、たとえば在来の客間のような、家の中で一番大きな室の一つを求めなさい。一面を窓とし、可能なら日光浴ができるようテラスに向かって開くこと。・・・
Le Corbusier “Vers une Architecture”, English Edition, London, 1927, 114-115頁
客間はすべて止め、代わりに一つの大きな広間を求めなさい。・・・
できるなら、臭いを避けるために台所を家の最上階に置きなさい。
家主に、漆喰塗りや壁紙の代りに、間接方式または拡散方式による照明器具を求めなさい。
真空掃除機を求めなさい。・・・
すべての部屋の窓に換気口を求めなさい。
子供に、家が住めるものとなるのは、光が豊かで、床と壁がきれいな時であることを教えなさい。・・・
両親が住んだ家より、一回り小さい家を借りなさい。あなた方の行為、秩序、思考の経済について考えなさい。
(ル・コルビュジエ著『建築をめざして』、吉阪隆正訳、鹿島出版会、1967、103頁)
ル・コルビュジエが1921年に雑誌に発表した「住まいの手引き」は、彼と同じくパリの下宿に住んでいた若者たちに宛てたものだ。 住宅造りの手引きというよりは、下宿の環境を改善するための法則だったと、バンハムは『環境としての建築』にて論じる。
Reyner Banham “The Architecture of the well-tempered environment” 堀江悟郎訳、鹿島出版会、1981、145頁
もちろん1921年よりずっと前、歴史の起源より今日まで、居住空間の環境を改善することは建築学の取組みの一つだった。いかに快適に住まうか、いかに幸福に生きるか。
建築が住む・働く・生きる環境のためにできること、技術は100年前よりも前に進んでいる。そんな技術の歴史を1つ1つ紐解きつつ、建築設計を行っていきたい。
そんなことを昨年の旅で考えていた。
グッスリ寝て翌朝スッキリ起きた時に、僕は幸せを感じる。でも、なかなか起こることではない。上の階の住人の物音で変な時間に起こされてしまう日もあれば、腰が痛くて眠りにつけない日もある。仕事で上手く行っていない日には、うなされることもある。
やっぱり心身ともに健康でないと、グッスリとは眠れない。
建築の技術を勉強しながら、今よりも健康でいるため、毎日グッスリ寝るための「手引き」を建築設計の視点から記事にしていきたい。個性的なデザインもいいけれども、建材費が、人件費が高騰している今日だからこそ、皆さんにはまず第一にご自身とご家族の健康に投資していただきたい。その一助になれば、と思う。
次回からはまず、2年前に実際に設計した建築で認証を受けた米国の健康認証制度WELL Building Standard®の内容を概覧していこうと思う。